GX志向型住宅補助金
こんにちは!ヤマタケ建設スタッフの竹田陽平です。2025年も施行された子育てグリーン住宅支援事業。その中で、今年から初めて追加されたGX志向型住宅補助金について解説します。
「GX志向型住宅」は、なかなか聴き馴染みのない言葉だと思います。GX志向型住宅のGXとは、グリーントランスフォーメーションの略です。環境に配慮した社会への変革、つまり脱炭素社会の実現に向けた取り組みのことです。そしてGX志向型住宅とは、次世代型の省エネ住宅です。
今までよく聞いたZEH住宅を更にパワーアップさせた省エネ住宅だと思って下さい。
補助金の概要
「GX志向型住宅」を新築する場合、以下の補助金が支給されます。
・補助額 :1戸あたり160万円
・対象世帯:すべての世帯(子育て世帯や若者夫婦世帯に限定されません)
・対象住宅:戸建住宅、共同住宅

2025年の子育てグリーン住宅支援事業においては認定長期優良住宅の補助額が80万円、ZEH住宅が40万円と2024年の補助額から減額しています。国としてもGX志向型住宅を推進しているのがわかりますね。
補助金の基準
続いて補助を受けるための基準についてです。
具体的には以下の4つの基準を満たすことが条件です。
1 断熱等性能等級6以上
2 再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率が35%以上
3 再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率が100%以上
4 高度エネルギーマネジメントの導入
簡単に言うとHEMSの導入です。4の基準ついては定められた設備をつければ基準をクリアできるので今回のブログ記事からは割愛します。
施工事例で解説
2025年の3月にお引渡をしたM様邸で、GX志向型住宅の基準を満たすことが出来るかを検証しながら1~3の基準について具体的に解説していきます。

1 断熱等性能等級6以上
まず1の基準を検証します。断熱等性能等級とは日本を8つの地域に区分し、それぞれの地域ごと等級に応じてUA値(ざっくり言うと断熱性能)とηAC値(ざっくり言うと遮熱性能)の基準を設けて評価するものです。
静岡県は6地域と7地域に分類されます。
※UA値とは「外皮(屋根・壁・窓・床など)から逃げる熱の平均量」を表した数値で、住宅の断熱性能を評価する指標です。値が小さいほど断熱性能が高いことを意味します。
※ηAC値は、冷房期に建物に日射熱がどのくらい侵入するかを表す指標です。値が小さいほど、日射熱の侵入が少なく、冷房効果が高くなります。

静岡県は6地域と7地域に分類されます。上の図のように、ヤマタケ建設の標準仕様と断熱等性能等級6の基準値は同じです。(UA値0.46)そのためGX志向型住宅の補助金の基準はクリアできています。

↑は実際のM様邸の外皮計算書ですがUA値とηAC値ともに等級6の基準をクリアして適合しています。

M様邸の断熱気密施工の様子 屋根断熱は310㎜のグラスウール

外壁には110㎜のロックウール。サッシは断熱性の高い樹脂サッシを採用しています。
2 再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率が35%以上
続いて2の基準を検証していきます。一次エネルギー消費量とは、住宅や建築物で使用されるエネルギーを、熱量(Jジュール、MJメガジュール、GJギガジュール)に換算して合計した値のことです。冷暖房、換気、給湯、照明など、建物全体のエネルギー使用量を評価する指標として用いられます。
具体的には国土交通省が作成したWEBプログラムに断熱性能や設備の性能を入力することで消費量が算出されます。

各居室の床面積や地域区分など入力します。

外皮の性能値を入力します。

それぞれの設備の性能や仕様を入力します。
余談ですが、冷蔵庫や洗濯機やTVなどの家電はその他設備とされ、住宅の断熱性能や家電の省エネ性能に関わらず年間21,141MJと定数で計算されます。
家電一式を高性能なものに買い替える必要は有りませんのでご安心ください。

このように冷暖房、換気、給湯、照明のそれぞれの消費量が算出されます。

設計一次エネルギー消費量(以下、名前が長いので設計Eとします。)とは、建築物の設計仕様に基づき、一年間に消費されるエネルギー量を一次エネルギーに換算したものです。M様邸で実際に導入するエアコンや換気扇や給湯器、照明器具の性能値を入力して求めます。
↑の合計 36,645MJ≒36.7GJ がM様邸の設計Eです。(赤枠部分)
この値が小さいほど一年間に使うエネルギーが少ない省エネなお家という事です。

続いて基準一次エネルギー消費量(以下、名前が長いので基準Eとします。)を求めます。基準Eとは建築物省エネ法で定められた、地域や建物用途、室使用条件などにより異なる基準値です。
静岡県藤枝市(7地域)でこのくらいの大きさの家なら一年間のエネルギー消費はこれくらいだよね。とういう基準になる値です。
↑の合計 62,567MJ≒62.6GJ です。(赤枠部分)
設計Eと基準Eそれぞれの一次エネルギー消費量が求められました。
つづいて一次エネルギー削減量を求めていきます。

基準Eから設計Eを引いた値が一次エネルギー削減量です。
62.6GJ - 36.7GJ = 25.9GJ
この値が大きいほどより省エネなお家という事です。

最後に一次エネルギー削減量を基準Eで割り100を掛けた値が一次エネルギー消費量の削減率です。
25.9GJ ÷ 62.6GJ × 100 = 41%!!
一次エネルギー消費量の削減率35%以上を達成!!基準をクリアです。
3 再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率が100%以上
最後に3の基準を検証します。まず、再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然界に存在する資源を繰り返し利用できるエネルギーのことです。つまり今回のM様邸のケースで言えば太陽光発電の発電量です。

M様邸の太陽光発電の発電量は 61019MJ≒61.0GJ
この発電量は太陽光パネルの枚数、パネルの向き(東西南北)、屋根勾配によって増減します。

先ほど求めた設計Eから太陽光発電の発電量を引いた値が再生可能エネルギーを含む設計Eになります。
36.7GJ - 61.0GJ = -24.3GJ
ここの値がマイナスということはM様邸は一年間に消費するエネルギーより発電するエネルギーの方が多いとっても省エネなお家という事です。

続いて、基準Eから再生可能エネルギーを含む設計Eを引いた値が、再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費削減量です。
62.6GJ - (-24.3GJ) = 86.9GJ
ここで値が増えていて少しわかりづらいと思いますが、この解説は最後にまとめてします。

最後に再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費削減量を基準Eで割り100を掛けた値が再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率です。
86.9GJ ÷ 62.6GJ ×100 = 138%!!
再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率が100%以上を達成!!基準をクリアです。
先ほどわかりづらかった再生可能エネルギーを含むエネルギー消費削減量についてですが、
M様邸の場合そもそも設計Eの値が小さく(36.7GJ)太陽光の発電量も多い(61.0GJ)為、再生可能エネルギーを含む設計Eの値がマイナスになっています。
36.7GJ - 61.0GJ = -24.3GJ
この為、再生可能エネルギーを含むエネルギー消費削減量が基準Eより増える訳です。
62.6GJ - (-24.3GJ) = 86.9GJ
反対に設計Eの値が大きく(仮に基準Eと同じ62.6GJ)太陽光の発電量も少ない(仮にM様邸の半分の30GJ)場合、再生可能エネルギーを含む設計Eの値はプラスになります。
62.6GJ - 30GJ = 32.6GJ
この値を先ほど再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費削減量を求めた式に入れます。
62.6GJ - (32.6GJ) = 30GJ
更にこの値を再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率を求めた式に入れると、、、
30GJ ÷ 62.6GJ ×100 = 47%
基準の削減率100%以上に全く届きません。
つまり設計Eの値が小さく、発電量は多くなるような設計、計画が重要という事です。
まとめ
今回の記事はGX志向型住宅の補助金について施工事例をもとに解説させて頂きました。
補助金額が160万円と魅力的な反面、今までの補助金より性能面や設備面のハードルが上がっています。
1の断熱等性能等級6以上については、ヤマタケ建設の標準仕様で基準をクリアしているので特に心配はありません。
2と3の基準は選ぶ設備の性能や仕様によっては基準をクリアできないこともあるので、事前に計算とシミュレーションをして最適な設備を提案しますのでお気軽にご相談ください♪